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- 投稿日:2015/10/07
中国の拡大主義について
(中国情報) 中国の拡大主義はどこまで続くのか?
中国の南シナ海、東シナ海におけるオーバープレゼンスは世界の顰蹙を買っています。
「歴史的な合理性はわが方に」との中国の主張ですが、「遠い昔の話を引っ張り出しても
意味がなく現時点でのコミュニケーションこそ大事」が川島 真・東大総合文化研究科教授
の見解です。
●「ゼロ地点が分らない」
✈先日の米中首脳会談でも取り上げられた中国の南シナ海、東シナ海の海洋進出、どこま
で続けるつもりなのか。ここ10年、その兆しはあったが、習近平政権になってそれが強
まり、領土主権の問題を前面に押し出してきた。中華民族の偉大な復興が背後にあった
からである。従って、当面は続くだろう。
✈中国はアヘン戦争以来、弱者として侵略され続けてきた。近年強くなってきたので、奪
われてきたものを奪い返してもいいのではないか、と言う思いがあるようだ。その「奪い
返す」中に南シナ海、東シナ海があり、「本来もともと自分のものであったのが奪われ、
それを奪い返すことに過ぎない」との理屈が中国にある。
✈1943年のカイロ宣言では、「日清戦争以降、日本は中国から奪い取った領土を返す」
としている。が、日本側からすると、「尖閣諸島は沖縄県の一部であり返す必要はない」
というロジックになるが、「あれは台湾の一部である」が中国の主張。従って、「日本は
尖閣諸島を中国に返すのが当然」と考えている。
✈アヘン戦争以来、領土を含めいろんな利権を奪われてきた。それを戦争に勝って奪い返し
たものの、その後、香港、マカオは返還を余儀なくされている。南シナ海、東シナ海の島
々は大昔より中国の固有の領土だと主張し出している。周囲の国としては「大昔」とはい
つを指すのか、その「ゼロ地点」が全く分らない。
●大事な「お互いの立場を尊重する姿勢」
✈歴史的にみて、清国は外交権を持つとか対外交渉権の半分を担うなんてことを考えてもい
なかった。ところが、ベトナムがフランス、ビルマが英国、朝鮮が日本の植民地になって
いく中で、清国はあることに気付く。即ち、西欧諸国が北京と交渉しようとしたから、他
人ごとと思っていたのが自分のことだと知る。
✈西欧の常識、ルールから学びとった「対外交渉の権利、その半分を自分たちも担える」と
意識しだし西欧と接するようになった。他方、周辺諸国も黙っていないだろう。「この領
域は大昔より中国の領土」と主張した際、相手側の文献にも同じことが記載されていたと
すればどうするのか?実にややこしいことになる。
✈「相手はどうだろうか?」という、身を置き換えて考えることが中国側の言論には見られ
ない。日本としては、1つは「何千年も昔の話(資料)を使って、今の事実を議論するのは
どうか」という問題提起をしていくべきだろう。2つ目に、現代社会の中で、過去の歴史
をすぐくっつけてしまうのはどうか、ある。
✈結局、お互いがお互いの立場を尊重していくことが、平和と安全のために大事であって、
中国の強いパワーが影響力として全体に及ぼしていくのは全く好ましくない。そのことを
中国側に強く伝えていくべきだ。それだけに中国との間のコミュニケーションを、政府か
ら民間レベルまでしっかり保つ必要がある。